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ずさんな看板工事のリカバリーをしました

2021年09月09日

ずさんな看板工事のリカバリーをしました

カッティングシートが剥がれてしまったので、直してほしい

というような内容のお電話を頂きました。
『カッティングシートが剥がれた』というワードから、職業病でしょうか、
勝手にテナントビルのエントランスにあるような各階の社名表示の一部が、経年劣化か何かで剥がれてしまっているんだろうな、とイメージしてしまいました。

ところがどうも話が噛み合わないのです。
そこで、現場の写真を見せて頂けますか?とお願いし、メールで送って頂きました。
それがこの2枚の写真です。
看板を設置した頃のものと、現在の状態。

???????

剥がれたって、何も残ってませんけど??

うっすらと文字の跡が見えますが・・・。
ずさんな看板工事のリカバリーをしました

一体何が起きたんでしょうか?

お客様は理容店様なのですが、お客様に看板が無くなってるよ、と言われて気づかれたそうです。
剥がれた物は残っておらず、訳がわからない状態。
どこかの親切な方が片付けてくれたのでしょうか??

さてさて、考えていてもしょうがないので、現地に行って見てきました。
近くで見て表面を触ると、なんだか粉っぽい。なるほど。何が起きたのか見当がつきました。

これは長期間常設する看板に使ってはいけない素材に印刷したのだと思います。
通常は塩化ビニールのインクジェットメディアに印刷しますが、これは合成紙に印刷されたんだと思います。
合成紙についてはググって頂くとして、この素材は基本的に屋内用であり、屋外での使用は短期間に限ります。
私が使うなら、せいぜい1ヶ月というところです。
今回、何が起きたのか解説すると、インクジェットメディアというのは積層構造になっています。
インク受理層、基材、粘着層です。ここにラミネートフィルムをオーバーコートして使います。
今回はこの基材が合成紙で、合成紙は耐候性に乏しく、長期間日光に晒されると、ボロボロの粉状に分解してしまいます。
つまり、基材が劣化してなくなってしまい、ラミネートフィルムに貼りついたインク受理層が飛んで行ってしまった。
ということです。
こんなにも綺麗に剥がれたことに逆に驚きました。
ずさんな看板工事のリカバリーをしました

取り付け方法もまたいい加減で

当初は絵柄部分が剥がれたとはいえ、看板自体は残っているので、この板(アルミ複合板)を利用して、この上にいつもの3M社VHB4180とシリコンを併用で新しい看板を貼って終了、施工費用も割安で〜を狙っていたのですが、前述のように看板表面が粉っぽい状態を見てしまったので、その夢は破れました。
こんな粉っぽいところに粘着剤などあり得ないので、看板そのものを撤去し、いつものように下地板をビス止めし、その上に新しい看板を設置せざるを得なくなりました。
うー、余計な仕事が増えた・・・・撤去って大変なんです。おまけにどんな付け方してるかわからないし。

開始してみたら、予想外の展開。看板の裏にはシリコンがべったり塗ってありました。
当然、壁面にもべったりと残ってしまいました。これじゃぁテナントさんが退去する際の現状復帰工事にお金がかかってしまいますね。
ビス穴程度なら、似たような色のシリコンを充填してしまえば、ほぼ目立たなくできるのに。

我々看板業社の仕事は難しいです。落ちてはいけないので、落ちないようにガッチリ付けます。
ですが、だからと言って何をやってもいいわけではないです。
お仕事をお受けする際には、現場の状況から、こういう方法を取ります、というご説明を必ずし、納得頂いた上で工事をさせて頂きます。
使う素材に関しても、しっかりとした知識と、自らテストをしたものを使用しています。
高額になりすぎないレベルの品物を吟味し、なるべくご負担が少なくなるように努力しています。
安心してお任せください。

A様今回はご用命頂きましてありがとうございました